効能又は効果に関連する使用上の注意
性器ヘルペスの再発抑制に対する本剤の投与により、セックスパートナーへの感染を抑制することが認められている。ただし、本剤投与中もセックスパートナーへの感染リスクがあるため、コンドームの使用等が推奨される。
単純疱疹
造血幹細胞移植における単純ヘルペスウイルス感染症(単純疱疹)の発症抑制
帯状疱疹
水痘
性器ヘルペスの再発抑制
用法及び用量
【成人】
単純疱疹:
通常、成人にはバラシクロビルとして1回500mgを1日2回経口投与する。
造血幹細胞移植における単純ヘルペスウイルス感染症(単純疱疹)の発症抑制:
通常、成人にはバラシクロビルとして1回500mgを1日2回造血幹細胞移植施行7日前より施行後35日まで経口投与する。
帯状疱疹:
通常、成人にはバラシクロビルとして1回1000mgを1日3回経口投与する。
水痘
通常、成人にはバラシクロビルとして1回1000mgを1日3回経口投与する。
性器ヘルペスの再発抑制
通常、成人にはバラシクロビルとして1回500mgを1日1回経口投与する。なお、HIV感染症の患者(CD4リンパ球数100/mm3以上)にはバラシクロビルとして1回500mgを1日2回経口投与する。
【小児】
単純疱疹:
通常、体重40kg以上の小児にはバラシクロビルとして1回500mgを1日2回経口投与する。
造血幹細胞移植における単純ヘルペスウイルス感染症(単純疱疹)の発症抑制:
通常、体重40kg以上の小児にはバラシクロビルとして1回500mgを1日2回造血幹細胞移植施行7日前より施行後35日まで経口投与する。
帯状疱疹:
通常、体重40kg以上の小児にはバラシクロビルとして1回1000mgを1日3回経口投与する。
水痘:
通常、体重40kg以上の小児にはバラシクロビルとして1回1000mgを1日3回経口投与する。
性器ヘルペスの再発抑制:
通常、体重40kg以上の小児にはバラシクロビルとして1回500mgを1日1回経口投与する。なお、HIV 感染症の患者(CD4リンパ球数100/mm3 以上)にはバラシクロビルとして1回500mgを1日2回経口投与する。
用法及び用量に関連する使用上の注意
(1)免疫正常患者において、性器ヘルペスの再発抑制に本剤を使用している際に再発が認められた場合には、1回500mg 1日1回投与(性器ヘルペスの再発抑制に対する用法・用量)から1回500mg 1日2回投与(単純疱疹の治療に対する用法・用量)に変更すること。治癒後は必要に応じ1回500mg 1日1回投与(性器ヘルペスの再発抑制に対する用法・用量)の再開を考慮すること。また、再発抑制に対して本剤を投与しているにもかかわらず頻回に再発を繰り返すような患者に対しては、症状に応じて1回250mg 1日2回又は1回1000mg 1日1回投与に変更することを考慮すること。
(2)腎障害のある患者又は腎機能の低下している患者、高齢者では、精神神経系の副作用があらわれやすいので、投与間隔を延長するなど注意すること。なお、本剤の投与量及び投与間隔の目安は下表のとおりである。また、血液透析を受けている患者に対しては、患者の腎機能、体重又は臨床症状に応じ、クレアチニンクリアランス10mL/min未満の目安よりさらに減量(250mgを24時間毎 等)することを考慮すること。また、血液透析日には透析後に投与すること。なお、腎障害を有する小児患者における本剤の投与量、投与間隔調節の目安は確立していない。(「慎重投与」、「重要な基本的注意」、「高齢者への投与」及び「過量投与」の項参照)
肝障害のある患者でもバラシクロビルは十分にアシクロビルに変換される。なお、肝障害のある患者での臨床使用経験は限られている。
慎重投与
1)腎障害のある患者
〔精神神経症状等があらわれやすい。(≪用法・用量に関連する使用上の注意≫及び「重要な基本的注意」の項参照)〕
2)高齢者
〔精神神経症状等があらわれやすい。(≪用法・用量に関連する使用上の注意≫、「重要な基本的注意」及び「高齢者への投与」の項参照)〕
重要な基本的注意
1)各効能・効果に対し設定された用法・用量で投与した場合、本剤投与時のアシクロビル曝露は、アシクロビル経口製剤投与時より高いことから、副作用の発現に留意すること。
(「重要な基本的注意の7)」の項参照)
2)本剤の投与は、発病初期に近いほど効果が期待できるので、早期に投与を開始すること。なお、目安として、帯状疱疹の治療においては皮疹出現後5日以内に、また、水痘の治療においては皮疹出現後2日以内に投与を開始することが望ましい。
3)単純疱疹の治療においては、本剤を5日間使用し、改善の兆しが見られないか、あるいは悪化する場合には、他の治療に切り替えること。ただし、初発型性器ヘルペスは重症化する場合があるため、本剤を10日間まで使用可能とする。
4)成人の水痘の治療においては本剤を5〜7日間、小児の水痘の治療においては本剤を5日間使用し、改善の兆しが見られないか、あるいは悪化する場合には、他の治療に切り替えること。
5)帯状疱疹の治療においては、本剤を7日間使用し、改善の兆しが見られないか、あるいは悪化する場合には、他の治療に切り替えること。
6)本剤による性器ヘルペスの再発抑制療法は、性器ヘルペスの発症を繰り返す患者(免疫正常患者においては、おおむね年6回以上の頻度で再発する者)に対して行うこと。また、本剤を1年間投与後、投与継続の必要性について検討することが推奨される。
7)本剤の活性代謝物であるアシクロビルの曝露量が増加した場合には、精神神経症状や腎機能障害が発現する危険性が高い。腎障害のある患者又は腎機能が低下している患者、高齢者においては、本剤の投与間隔及び投与量を調節し、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。なお、一般に精神神経症状は本剤の投与中止により回復する。
(≪用法・用量に関連する使用上の注意≫及び「過量投与」の項参照)
8)腎障害のある患者又は腎機能が低下している患者、高齢者、水痘患者等の脱水症状をおこしやすいと考えられる患者では、本剤の投与中は適切な水分補給を行うこと。
(「高齢者への投与」の項参照)
9)水痘の治療において、悪性腫瘍、自己免疫性疾患などの免疫機能の低下した患者に対する有効性及び安全性は確立していない。
(使用経験がない)
10)水痘の治療における本剤の使用経験は少ないため、本剤を水痘の治療に用いる場合には、治療上の有益性と危険性を勘案して投与すること。
11)意識障害等があらわれることがあるので、自動車の運転等、危険を伴う機械の操作に従事する際には注意するよう患者に十分説明すること。なお、腎機能障害患者では、特に意識障害等があらわれやすいので、患者の状態によっては従事させないよう注意すること。
(「用法・用量に関連する使用上の注意」の項参照)
相互作用
併用注意
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
---|
プロベネシド | 本剤の活性代謝物のアシクロビルの排泄が抑制され、アシクロビルの平均血漿中濃度曲線下面積(AUC)が48%増加するとの報告がある注1)。 | プロベネシドは尿細管分泌に関わるOAT1及びMATE1を阻害するため、活性代謝物のアシクロビルの腎排泄が抑制されると考えられる。 |
シメチジン | 本剤の活性代謝物のアシクロビルの排泄が抑制され、アシクロビルのAUCが27%増加するとの報告がある注1)。 | シメチジンは尿細管分泌に関わるOAT1、MATE1及びMATE2-Kを阻害するため、活性代謝物のアシクロビルの腎排泄が抑制されると考えられる。 |
ミコフェノール酸 モフェチル | 本剤の活性代謝物のアシクロビルとの併用により、アシクロビル及びミコフェノール酸 モフェチル代謝物の排泄が抑制され、両方のAUCが増加するとの報告がある注1)。 | 活性代謝物のアシクロビルとミコフェノール酸 モフェチル代謝物が尿細管分泌で競合すると考えられる。 |
テオフィリン | 本剤の活性代謝物のアシクロビルとの併用により、テオフィリンの中毒症状があらわれることがある。 | 機序は不明であるが、本剤の活性代謝物のアシクロビルがテオフィリンの代謝を阻害するためテオフィリンの血中濃度が上昇することが考えられる。 |
---|
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
プロベネシド | 本剤の活性代謝物のアシクロビルの排泄が抑制され、アシクロビルの平均血漿中濃度曲線下面積(AUC)が48%増加するとの報告がある注1)。 | プロベネシドは尿細管分泌に関わるOAT1及びMATE1を阻害するため、活性代謝物のアシクロビルの腎排泄が抑制されると考えられる。 |
シメチジン | 本剤の活性代謝物のアシクロビルの排泄が抑制され、アシクロビルのAUCが27%増加するとの報告がある注1)。 | シメチジンは尿細管分泌に関わるOAT1、MATE1及びMATE2-Kを阻害するため、活性代謝物のアシクロビルの腎排泄が抑制されると考えられる。 |
ミコフェノール酸 モフェチル | 本剤の活性代謝物のアシクロビルとの併用により、アシクロビル及びミコフェノール酸 モフェチル代謝物の排泄が抑制され、両方のAUCが増加するとの報告がある注1)。 | 活性代謝物のアシクロビルとミコフェノール酸 モフェチル代謝物が尿細管分泌で競合すると考えられる。 |
テオフィリン | 本剤の活性代謝物のアシクロビルとの併用により、テオフィリンの中毒症状があらわれることがある。 | 機序は不明であるが、本剤の活性代謝物のアシクロビルがテオフィリンの代謝を阻害するためテオフィリンの血中濃度が上昇することが考えられる。 |
副作用
副作用等発現状況の概要
本剤は使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していない。
重大な副作用
1.アナフィラキシーショック、アナフィラキシー(呼吸困難、血管浮腫等)
頻度不明
2.汎血球減少、無顆粒球症、血小板減少、播種性血管内凝固症候群(DIC)、血小板減少性紫斑病
頻度不明
※※ 3.急性腎障害、尿細管間質性腎炎
頻度不明
4.精神神経症状:
頻度不明
意識障害(昏睡)、せん妄、妄想、幻覚、錯乱、痙攣、てんかん発作、麻痺、脳症等がみられることがある。
5.中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necro-lysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)
頻度不明
6.呼吸抑制、無呼吸
頻度不明
7.間質性肺炎
頻度不明
8.肝炎、肝機能障害、黄疸
頻度不明
9.急性膵炎
頻度不明
以上のような症状がまれにあらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
その他の副作用
過 敏 症注2)
頻度不明
発疹、蕁麻疹、そう痒、光線過敏症
肝 臓
頻度不明
肝機能検査値の上昇
消 化 器
頻度不明
嘔気、嘔吐、腹部不快感、下痢、腹痛
精神神経系
頻度不明
めまい、頭痛、意識低下
腎臓・泌尿器
頻度不明
腎障害、排尿困難、尿閉
| 頻度不明 |
過 敏 症注2) | 発疹、蕁麻疹、そう痒、光線過敏症 |
肝 臓 | 肝機能検査値の上昇 |
消 化 器 | 嘔気、嘔吐、腹部不快感、下痢、腹痛 |
精神神経系 | めまい、頭痛、意識低下 |
腎臓・泌尿器 | 腎障害、排尿困難、尿閉 |
以上のような症状があらわれることがあるので、異常が認められた場合には、減量又は投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
高齢者への投与
本剤は、活性代謝物のアシクロビルに変換された後、主として腎臓から排泄されるが、高齢者では腎機能が低下していることが多いため高いアシクロビルの血中濃度が持続するおそれがあるので、投与間隔を調節し、患者の状態を観察しながら、慎重に投与すること。(≪用法・用量に関連する使用上の注意≫及び「重要な基本的注意」の項参照)また、本剤の投与中は適切な水分補給を行うこと。
妊婦、産婦、授乳婦等への投与
1)妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
〔活性代謝物のアシクロビルにおいて、動物実験(ラット)の妊娠10日目に、母動物に腎障害のあらわれる大量(200mg/kg/day以上)を皮下投与した実験では、胎児に頭部及び尾の異常が認められたと報告されている。〕
2)本剤による性器ヘルペス再発抑制療法中に妊娠し、その後も本療法を続けた場合の安全性は確立していない。
3)授乳婦への投与は慎重に行うこと。
〔本剤投与後、活性代謝物のアシクロビルがヒト乳汁中へ移行することが報告されている。〕
小児等への投与
低出生体重児、新生児又は乳児に対する安全性は確立していない。
(低出生体重児、新生児に対しては使用経験がなく、乳児に対しては使用経験が少ない)〔動物実験(ラット)でバラシクロビルを経口投与したときの活性代謝物であるアシクロビルの曝露量は、成熟動物に比べて幼若動物で大きいことが報告されている。〕
過量投与
徴候、症状:
本剤の過量投与により、急性腎不全、精神神経症状(錯乱、幻覚、激越、意識低下、昏睡等)が報告されており、嘔気・嘔吐が発現する可能性も考えられる。
なお、これら報告例には、適切な減量投与が行われなかったために過量投与の状態となった腎障害患者又は高齢者における例が多く含まれていた。
処置:
毒性の発現を注意深く観察すること。血液透析により、アシクロビルを血中より除去することができるので、過量投与により症状が発現した場合は、処置の一つとして血液透析を考慮すること。
適用上の注意
1)服用時:
1.本剤は主薬の苦みを防ぐため、コーティングを施しているので、錠剤をつぶすことなく服用させること。
2.本剤を飲みにくい場合には多めの水で1錠ずつ、服用させること。
2)薬剤交付時:PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。
(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔を起こして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することが報告されている。)
その他の注意
1)海外において、本剤の高用量(8g/日)を用い、重度の免疫不全患者(特に進行性HIV感染症患者)におけるCMV感染症予防に対する臨床試験が実施されている。この試験において、本剤が長期間にわたり投与された患者で、腎不全、微小血管溶血性貧血及び血小板減少(ときに併発)の発現が認められている。また、これらの症状は本剤の投与を受けていない同じ基礎疾患、合併症等を有する患者においても発現が認められている。
2)Ames試験及びラット骨髄細胞染色体異常試験では陰性であったが、マウス骨髄小核試験では、高用量(経口投与、500mg/kg、アシクロビルのヒト血漿中濃度の26〜51倍相当)において小核出現頻度の軽度増加を認めた。また、マウスリンフォーマ細胞を用いた遺伝子突然変異試験では、代謝活性化系の存在下で1000μg/mL以上の濃度において弱い遺伝毒性(変異コロニー頻度の増加)を示した。
構造式:
一般名:
バラシクロビル塩酸塩 (Valaciclovir Hydrochloride)
化学名:
2-[(2-Amino-1,6-dihydro-6-oxo-9H -purin-9-yl)methoxy]ethyl L-valinate monohydrochloride
分子式:
分子量:
C13H20N6O4・HCl
性 状:
白色〜微黄白色の結晶性の粉末又は粉末である。水に溶けやすく、エタノール(99.5)に極めて溶けにくい。
0.05mol/L塩酸試液に溶ける。
旋光度:〔α〕20D :-7.1 〜 -11.1°(1g、水、20mL、100mm)
本品は結晶多形が認められる。