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クレキサン皮下注キット2000IU

血液凝固阻止剤

1筒 895円

添付文書番号

3334406G1020_1_13

企業コード

780069

作成又は改訂年月

2020年1月改訂
(第1版)

日本標準商品分類番号

873339

薬効分類名

血液凝固阻止剤

承認等

販売名

クレキサン皮下注キット2000IU

販売名コード

3334406G1020

販売名英字表記

Clexane S.C. Injection

販売名ひらがな

くれきさんひかちゅうきっと

承認番号等

承認番号
22000AMX00025

販売開始年月

2008年4月

貯法、有効期間

貯法
室温保存
有効期間
3年

規制区分

劇薬
処方箋医薬品 注1)
注1)注意―医師等の処方箋により使用すること
生物由来製品

一般的名称

エノキサパリンナトリウム

警告

脊椎・硬膜外麻酔あるいは腰椎穿刺等との併用により、穿刺部位に血腫が生じ、神経の圧迫による麻痺があらわれるおそれがある。併用する場合には神経障害の徴候及び症状について十分注意し、異常が認められた場合には直ちに適切な処置を行うこと。

禁忌(次の患者には投与しないこと)

  1. 本剤の成分又はヘパリン、ヘパリン誘導体(低分子量ヘパリン等)に対し過敏症の既往歴のある患者
  2. 出血している患者(頭蓋内出血、後腹膜出血又は他の重要器官における出血等)[出血が助長されるおそれがある。]
  3. 急性細菌性心内膜炎患者[血栓剥離に伴う血栓塞栓様症状を呈するおそれがある。]
  4. 重度の腎障害(クレアチニンクリアランス30mL/min未満)のある患者
  5. ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の既往歴のある患者[HITが起こるおそれがある。]

組成・性状

組成

クレキサン皮下注キット2000IU
有効成分
1シリンジ(0.2mL)中、エノキサパリンナトリウム  2000IU(抗第Xa因子活性)含有
備考:ブタの腸粘膜由来

製剤の性状

クレキサン皮下注キット2000IU
剤形注射液
pH5.5~7.5
浸透圧比約1(生理食塩液に対する比)
性状
無色~淡黄色澄明の液

効能又は効果

  • 下記の下肢整形外科手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制
    股関節全置換術、膝関節全置換術、股関節骨折手術
  • 静脈血栓塞栓症の発症リスクの高い、腹部手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制

効能又は効果に関連する注意

〈静脈血栓塞栓症の発症リスクの高い、腹部手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制〉
腹部手術のうち帝王切開術施行患者における有効性・安全性は確立していないため、これらの患者に投与する場合には、リスクとベネフィットを十分考慮すること。使用経験は少ない。

用法及び用量

通常、エノキサパリンナトリウムとして、1回2000IUを、原則として12時間毎に1日2回連日皮下注射する。

用法及び用量に関連する注意

  1. 国内臨床試験において、15日間以上投与した場合の有効性及び安全性は検討されていない。
  2. 原則として、術後24~36時間に手術創等からの出血がないことを確認してから投与を開始すること。
  3. 腎障害のある患者では本剤の血中濃度が上昇し、出血の危険性が増大するおそれがある。クレアチニンクリアランス30~50mL/minの患者に投与する場合は、国内臨床試験成績も踏まえて、症例毎の血栓リスク及び出血リスクを勘案して適用を慎重に判断すること。なお、出血の危険性が高いと考えられる場合には、投与間隔を延長することが望ましい(エノキサパリンナトリウムとして2000IUを1日1回投与する)。

重要な基本的注意

  1. 脊椎・硬膜外麻酔等との併用により、穿刺部位に血腫が生じ、神経の圧迫による長期又は永続的な麻痺等の神経障害があらわれるおそれがあるので、以下の点に留意すること。
    1. 出血のリスクを避けるために、カテーテルの挿入又は抜去は本剤の抗凝固作用が低下した時点で行うこと。
      本剤の初回投与開始2時間前までには、脊椎・硬膜外カテーテルを抜去しておくことが望ましい。やむを得ず併用する場合には、本剤投与後10~12時間経過した後にカテーテルを抜去すること。その後の本剤投与はカテーテル抜去後2時間以上経過した後行うこと。
      また、やむを得ず新たにカテーテルを挿入する場合には、本剤投与後10~12時間経過した後に行うこと。その後の本剤投与はカテーテル挿入後2時間以上経過した後行うこと。
    2. 次の場合では、神経障害のリスクがより高くなる。
      • 脊椎手術の既往又は脊柱変形のある患者
      • 術後のカテーテル留置
      • 止血に影響を及ぼす薬剤(非ステロイド性消炎鎮痛剤等)との併用
      • 血管損傷を伴う針の刺入やカテーテルの挿入又は頻回の刺入
    3. 併用する場合には、背部痛、感覚及び運動障害、膀胱直腸障害等の神経障害の徴候及び症状を十分に観察すること。
  2. ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)を含む血小板減少のリスクがあるので、本剤投与開始前及び投与中は1週間に1回程度は臨床検査を実施するなど観察を十分に行うこと。なお、投与終了後も血小板数の減少のリスクが継続するおそれがある。
  3. 出血等の副作用が生じることがあるので、必要に応じて血算(ヘモグロビン値及び血小板数)及び便潜血検査等の臨床検査を実施することが望ましい。
  4. 「高リスク」以上の泌尿器科及び婦人科手術施行患者に対する使用経験が少ないため、これらの患者に投与する場合には、患者の状態を十分に観察すること。
  5. 活性化凝固時間(ACT)、プロトロンビン時間(PT)及び活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)等の通常の凝固能検査は、本剤に対する感度が比較的低く、薬効をモニタリングする指標とはならないので、臨床症状を十分に観察し、出血等がみられた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

特定の背景を有する患者に関する注意

合併症・既往歴等のある患者

  1. 出血する可能性のある患者
    止血障害、消化性潰瘍の既往のある患者、虚血性脳卒中発症後日の浅い患者、コントロール出来ない高血圧症、糖尿病性網膜症、脳・眼科手術後日の浅い患者、侵襲性処置を受けた患者、止血に影響を与える薬剤を投与されている患者においては血管や臓器の障害箇所に出血が起こるおそれがある。
  2. 低体重の患者
    相対的に血中濃度が上昇し、出血が起こるおそれがある。

腎機能障害患者

  1. 重度の腎障害患者
    投与しないこと。血中濃度が上昇し、出血の危険性が増大するおそれがある。
  2. 軽度又は中等度の腎障害患者
    排泄が遅延し、血中濃度が上がることにより出血が起こるおそれがある。

肝機能障害患者

  1. 重篤な肝障害患者
    凝固因子の産生が低下していることがあるので、出血が起こるおそれがある。

妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。

授乳婦

治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)で35S-エノキサパリンナトリウムを投与したとき、微量の放射活性の乳汁中への移行が報告されている。

小児等

小児等を対象とした臨床試験は実施していない。

高齢者

出血リスク増大のおそれがある。一般的に生理機能が低下している。

相互作用

併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子
抗凝固剤
ヘパリン
ワルファリン 等
出血傾向が増強するおそれがあるので、併用しないことが望ましいが、やむを得ず併用する場合には観察・検査を十分に行う等慎重に投与すること。
両剤の抗凝固作用が相加的に増強される。
血小板凝集抑制剤
チクロピジン塩酸塩
ジピリダモール 等
出血傾向が増強するおそれがあるので、併用しないことが望ましいが、やむを得ず併用する場合には観察・検査を十分に行う等慎重に投与すること。
本剤の抗凝固作用と血小板凝集抑制作用により相加的に出血傾向が増強される。
サリチル酸誘導体
アスピリン 等
出血傾向が増強するおそれがあるので、併用しないことが望ましいが、やむを得ず併用する場合には観察・検査を十分に行う等慎重に投与すること。
本剤の抗凝固作用と血小板凝集抑制作用により相加的に出血傾向が増強される。
デキストラン40
出血傾向が増強するおそれがあるので、併用しないことが望ましいが、やむを得ず併用する場合には観察・検査を十分に行う等慎重に投与すること。
本剤の抗凝固作用と血小板凝集抑制作用により相加的に出血傾向が増強される。
血栓溶解剤
ウロキナーゼ
t-PA製剤 等
出血傾向が増強するおそれがあるので、併用しないことが望ましいが、やむを得ず併用する場合には観察・検査を十分に行う等慎重に投与すること。
本剤の抗凝固作用とフィブリン溶解作用により相加的に出血傾向が増強される。
非ステロイド性消炎鎮痛剤
ロキソプロフェン
ナトリウム水和物
ジクロフェナク
ナトリウム 等
出血傾向が増強するおそれがあるので、併用する場合には観察・検査を十分に行う等慎重に投与すること。
本剤の抗凝固作用と血小板凝集抑制作用により相加的に出血傾向が増強される。

副作用

次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

重大な副作用

  1. ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)
  2. 血腫・出血
    国内臨床試験において皮下出血(3.7%)、処置後出血(3.1%)、消化管出血(0.1%)等、海外で脊髄硬膜外血腫、後腹膜出血、頭蓋内出血(いずれも頻度不明)等の血腫・出血が報告されている。出血は、手術部位以外でも起こる可能性があり、致死的な場合もある。
  3. 血小板減少(0.3%)
    免疫機序を介した血小板減少症とそれに伴う動脈血栓により、梗塞又は四肢の虚血が起こることがあるので、投与後は血小板数を測定し、血小板数の著明な減少が認められた場合には、その後の投与を中止すること。
  4. 肝機能障害、黄疸(頻度不明)
    AST、ALTの上昇等を伴う肝機能障害や黄疸があらわれることがある。

その他の副作用

1~10%未満
1%未満
頻度不明
精神神経系
頭痛、めまい
感覚減退、不眠
血液
血小板数増加、貧血、白血球数減少、白血球数増加
好酸球数増加
過敏症
紅斑、そう痒症
発疹
消化器
便秘
下痢、悪心・嘔吐、消化不良、腹痛
筋・骨格系
四肢痛
背部痛
肝臓
ALT上昇、γ-GTP上昇、AST上昇、Al-P上昇、LDH上昇
肝機能異常、ビリルビン上昇
腎臓
血中尿素上昇
投与部位
疼痛・硬結・そう痒感・熱感
中等度の刺激感、皮膚壊死注)
その他
末梢性浮腫、発熱、熱感、血中カルシウム減少
血中カリウム減少、 CRP上昇、創部分泌、動悸、胸痛、創合併症、末梢冷感、湿疹、トリグリセリド上昇
水疱性皮疹、皮膚血管炎、血中カリウム上昇、脱毛症
注)浸潤及び疼痛を伴う紫斑あるいは紅斑を初期症状とする。主に注射部位にみられるが、他のヘパリン製剤でもみられるものであり、このような場合は直ちに投与を中止すること。

過量投与

  1. 症状
    本剤を過量投与した場合、出血性の合併症を引き起こすおそれがある。
  2. 処置
    本剤の抗凝固作用を急速に中和する必要のある場合には、プロタミン硫酸塩を投与する。プロタミン硫酸塩1mgは本剤の100IUの効果を抑制するが、以下の表を参考の上、プロタミン硫酸塩を投与すること。プロタミン硫酸塩投与2~4時間後に測定したaPTTが延長したままである場合、本剤100IUにつきプロタミン硫酸塩0.5mgの割合で2回目の投与ができる。なお、本剤の抗第Xa因子活性は、高用量のプロタミン硫酸塩を投与しても、完全に中和されるわけではない(最大約60%)。
    本剤投与後の時間
    プロタミン硫酸塩の投与量
    8時間以内
    プロタミン硫酸塩1mg/本剤100IUの割合で投与すること。
    8時間~12時間
    プロタミン硫酸塩0.5mg/本剤100IUの割合で投与すること。
    12時間以上
    プロタミン硫酸塩の投与は必要ないと考えられる。
    追加の中和が必要な場合
    プロタミン硫酸塩0.5mg/本剤100IUの割合で投与すること。

適用上の注意

薬剤投与時の注意
  1. 腹部に皮下投与するが、同一部位に繰り返し注射することは避けることが望ましい。
  2. 薬剤の損失を防ぐために注射前にシリンジから気泡を抜かないこと。
  3. 親指と人差し指で軽く皮膚をつまみ、針の全長を皮下組織へ垂直に刺すこと。注射が完了するまで皮膚を離さないこと。
薬剤投与後の注意
  1. 注射後、投与部位をもまないこと。

その他の注意

臨床使用に基づく情報
  1. 類薬との互換性:本剤は未分画ヘパリンや他の低分子量ヘパリンと製造工程、分子量の分布が異なり、同一単位(抗第Xa因子活性)でも他のヘパリン類とは互換性がないため、本剤の用法及び用量に従うこと。
  2. 適応外であるが、海外で人工心臓弁置換患者に血栓予防の目的で本剤を投与した症例において、人工心臓弁に血栓を生じたとの報告がある。その症例のうち妊婦において、生じた血栓により母親及び胎児死亡が報告されているが、この報告例には、海外臨床試験で本剤を1回100IU/kg、1日2回投与した時の死亡例を含む。人工心臓弁置換妊婦は、血栓塞栓症のリスクがより高い可能性がある。
  3. 本剤投与中に可逆性のトランスアミナーゼ上昇が報告されている。

薬物動態

血中濃度

  1. 単回投与
    健康成人男子18例にエノキサパリンナトリウム30mg、60mg及び90mg(それぞれ3000IU、6000IU及び9000IUに相当)を単回皮下投与したとき注3) 、血漿中抗第Xa因子活性のAmax(最高活性値)及びAUCは投与量に依存し、線形的な増加を示した。消失半減期及びクリアランスは投与量によらずほぼ一定で、それぞれ3.90~4.72時間及び0.75~0.87L/hであった。また、分布容積は4.82~5.10Lであった 。
  2. 反復投与
    健康成人男子6例にエノキサパリンナトリウムを第1日及び第9日に20mg(2000IUに相当)を単回皮下投与し注3) 、第2~8日に1日2回7日間反復皮下投与したところ、投与後72時間までに定常状態に達した。第9日の血漿中抗第Xa因子活性のAmax及びAUCは第1日に比べそれぞれ47及び49%増加した 。
    健康成人男子に単回及び反復皮下投与したときの血漿中抗第Xa因子活性の薬物動態パラメータ
    投与量
    (IU)
    Amax
    (IU/mL)
    tmax注1)
    (h)
    AUC注2)
    (h・IU/mL)
    t1/2
    (h)
    CL/F
    (L/h)
    単回投与
    3,000
    (6例)
    0.46±0.05
    2.0
    (2.0-2.5)
    3.37±0.44
    3.90±0.84
    0.87±0.11
    6,000
    (6例)
    0.76±0.09
    3.0
    (2.0-4.0)
    7.57±0.71
    4.47±0.40
    0.78±0.08
    9,000
    (6例)
    1.11±0.19
    3.5
    (1.5-4.0)
    11.89±2.15
    4.72±0.42
    0.75±0.14
    反復投与
    第1日
    2,000
    (6例)
    0.25±0.03
    2.3
    (1.5-3.0)
    1.62±0.18
    3.19±0.56
    1.14±0.16
    第9日
    2,000
    (5例)
    0.35±0.08
    2.0
    (2.0-2.5)
    2.38±0.52
    5.68±2.27
    0.88±0.20
    平均値±標準偏差
    注1)中央値(最小値-最大値)
    注2)単回投与;AUC(0-t)、反復投与;AUC(0-12)

分布

健康成人男女4例に99mTc(テクネチウム99m)で標識したエノキサパリンナトリウム30mg(3000IUに相当)を単回静脈内投与したとき注3) 、投与後6時間における放射能分布は心臓、肝臓及び腎臓に限局していた (外国人データ)。

排泄

健康成人男女4例に99mTc(テクネチウム99m)で標識したエノキサパリンナトリウム30mg(3000IUに相当)を単回静脈内投与したとき注3) 、投与放射能の29%が投与後8時間までに、41%が投与後24時間までに尿中に排泄され、主要な排泄経路であることが示唆された (外国人データ)。

特定の背景を有する患者

  1. 腎機能障害患者
    腎機能障害患者36例〔軽度(50mL/min<クレアチニンクリアランス(以下、CLCR)≤80mL/min)12例、中等度(30mL/min<CLCR≤50mL/min)12例、高度(CLCR≤30mL/min)12例〕にエノキサパリンナトリウム40mgを1日1回4日間反復皮下投与したとき注3) 、反復投与後4日目の抗第Xa因子活性のAUCは健康成人に比較して軽度及び中等度の患者ではそれぞれ20%及び21%高かったのに対し、高度の患者では65%増加した。また、消失半減期は健康成人の6.9時間に対して高度の腎機能障害患者では15.9時間と延長した (外国人データ)。
注3)本剤の承認された用法及び用量は1回2000IUを、原則として12時間毎に1日2回連日皮下注射である。

臨床成績

有効性及び安全性に関する試験

〈下肢整形外科手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制〉
  1. 国内第II相/第III相試験(股関節全置換術患者)
    股関節全置換術患者337例(有効性評価可能例数)を対象に実施したプラセボ対照二重盲検試験において、エノキサパリンナトリウム20mg1日1回、40mg1日1回、20mg1日2回又はプラセボを14日間皮下投与した注1) 。静脈血栓塞栓症の発生率は、プラセボ群41.9%(36/86)に対し、20mg(2000IUに相当)1日1回群25.9%(21/81)、40mg1日1回群33.8%(27/80)、20mg1日2回群20.0%(18/90)であり、20mg1日2回群はプラセボ群に比較し有意な(p=0.001)静脈血栓塞栓症発生率の減少効果(Relative Risk Reduction:52.2%)が確認された。なお、本剤との関連性を問わない大出血は20mg1日1回群で1例、40mg1日1回群で2例、20mg1日2回群で3例認められた。臨床的に重要な部位の出血に該当する事例は、20mg1日1回群に眼球内出血が1例みられたが本剤との関連性は否定された。また、本剤群とプラセボ群の大出血発現率に有意な差は認められなかった 。
    副作用の発現率は、プラセボ群54.5%(55/101例)、20mg1日1回群58.0%(58/100例)、40mg1日1回群61.8%(63/102例)及び20mg1日2回群63.5%(66/104例)であり、群間比較では有意差はみられなかった(χ2検定)。20mg1日2回群で発現率が5%を超えた副作用は、γ-GTP増加14.4%、血小板数増加14.4%、ALT増加11.5%、AST増加9.6%、貧血9.6%、ALP増加8.7%、LDH増加5.8%及び投与部位疼痛5.8%であった 。
  2. 国内第II相/第III相試験(膝関節全置換術患者)
    膝関節全置換術患者315例(有効性評価可能例数)を対象に実施したプラセボ対照二重盲検試験において、エノキサパリンナトリウム20mg1日1回、40mg1日1回、20mg1日2回又はプラセボを14日間皮下投与した注1) 。静脈血栓塞栓症の発生率は、プラセボ群60.8%(48/79)に対し、20mg1日1回群44.9%(35/78)、40mg1日1回群35.1%(26/74)、20mg1日2回群29.8%(25/84)であり、20mg1日2回群はプラセボ群に比較し有意な(p<0.001)静脈血栓塞栓症発生率の減少効果(Relative Risk Reduction:51.0%)が確認された。なお、本剤との関連性を問わない大出血はプラセボ群で4例、40mg1日1回群で1例、20mg1日2回群で3例認められたが、後腹膜、頭蓋内、眼球内などの臨床的に重要な部位の出血に該当する事例は認められなかった。また、本剤群とプラセボ群の大出血発現率に有意な差は認められなかった 。
    副作用の発現率は、プラセボ群69.7%(62/89例)、20mg1日1回群64.0%(57/89例)、40mg1日1回群58.2%(53/91例)及び20mg1日2回群68.4%(65/95例)であり、群間比較では有意差は認められなかった(χ2検定)。20mg1日2回群で発現率が5%を超えた副作用は、貧血10.5%、γ-GTP増加10.5%、血小板数増加10.5%、ALT増加7.4%、AST増加7.4%、末梢性浮腫6.3%、斑状出血6.3%、LDH増加5.3%及びALP増加5.3%であった 。
  3. 国内第III相試験(股関節全置換術患者)
    股関節全置換術患者141例(有効性評価可能例数)を対象にした二重盲検比較試験において、エノキサパリンナトリウム20mg1日1回又は20mg1日2回を14日間皮下投与した。静脈血栓塞栓症の発生率は、20mg1日1回群17.1%(12/70)、20mg1日2回群2.8%(2/71)であった。なお、本剤との関連性を問わない大出血は20mg1日2回群で2例認められたが、後腹膜、頭蓋内、眼球内などの臨床的に重要な部位の出血に該当する事例は認められなかった 。
    副作用の発現率は、20mg1日1回群43.2%(35/81例)、20mg1日2回群50.0%(40/80例)であり、両群間に有意差は認められなかった(χ2検定)。20mg1日2回群で発現率が5%を超えた副作用は、ALT増加18.8%、γ-GTP増加15.0%、ALP増加10.0%、血小板数増加8.8%、AST増加7.5%及びLDH増加6.3%であった 。
  4. 国内第III相試験(股関節骨折術患者)
    股関節骨折術患者43例(有効性評価可能例数)を対象にした非盲検試験において、エノキサパリンナトリウム20mg1日2回を14日間皮下投与した。静脈血栓塞栓症の発生率は、14.0%(6/43)であった。なお、本剤との関連性を問わない大出血は1例認められたが、後腹膜、頭蓋内、眼球内などの臨床的に重要な部位の出血に該当する事例は認められなかった 。
    副作用の発現率は、34.6%(18/52例)であり、発現率が5%を超えた副作用は、ALP増加7.7%、ALT増加5.8%及びAST増加5.8%であった 。
  5. 国内臨床成績
    国内で実施した整形外科領域での臨床試験4試験についてクレアチニンクリアランスでサブグループ化した静脈血栓塞栓症発生率及び本剤との関連性を問わない出血事象発現率を以下の表に示す。
    投与開始前(Day1)のCLCR(mL/min)
    プラセボ群
    エノキサパリンナトリウム群
    20mg1日1回群
    20mg1日2回群
    例数(%)
    例数(%)
    例数(%)
    静脈血栓塞栓症発生率
    30-50
    9/17(52.94)
    5/12(41.67)
    5/30(16.67)
    50-80
    29/57(50.88)
    27/84(32.14)
    27/109(24.77)
    ≥80
    46/91(50.55)
    36/133(27.07)
    19/149(12.75)
    出血事象発現率(すべての出血事象)
    30-50
    1/22(4.55)
    2/14(14.29)
    5/40(12.50)
    50-80
    2/59(3.39)
    4/101(3.96)
    12/121(9.92)
    ≥80
    7/109(6.42)
    7/154(4.55)
    11/170(6.47)
    出血事象発現率(大出血)
    30-50
    1/22(4.55)
    0/14(0.00)
    3/40(7.50)
    50-80
    2/59(3.39)
    1/101(0.99)
    3/121(2.48)
    ≥80
    1/109(0.92)
    0/154(0.00)
    3/170(1.76)
〈静脈血栓塞栓症の発症リスクの高い、腹部手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制〉
  1. 国内第III相試験(腹部外科手術患者)
    腹部外科手術患者83例(有効性評価可能例数)を対象にした非盲検試験において、エノキサパリンナトリウム20mg1日2回を14日間(早期退院の場合は7日間以上)皮下投与した。術後から本剤投与前までに間欠的空気圧迫法(IPC)を少なくとも1回使用した本剤群の静脈血栓塞栓症の発生率は、1.2%(1/83)であり、一方、IPC群注2) 31例の静脈血栓塞栓症の発生率は、19.4%(6/31)であった。また、本剤群における術後から投与前までのIPC使用状況は、同期間のIPC群における使用状況と同様であった。なお、本剤群において薬剤との関連性を問わない大出血が5例認められたが、後腹膜、頭蓋内、眼球内などの臨床的に重要な部位の出血に該当する事例は認められなかった 。
    副作用の発現率は37.6%(41/109例)であり、発現率が5%を超えた副作用は、ALT増加9.2%、AST増加9.2%及びγ-GTP増加9.2%であった 。
注1)本剤の承認された用法及び用量は1回2000IUを、原則として12時間毎に1日2回連日皮下注射である。
注2)IPC群は統計学的な比較対照群ではなく、参考として設定したものである。

薬効薬理

作用機序
  1. 血液凝固因子に対する作用の選択性(抗第Xa因子活性/抗第IIa因子活性比)
    エノキサパリンナトリウムは、アンチトロンビンIII(ATIII)と複合体を形成し、ATIIIの第Xa因子及び第IIa因子阻害作用を促進して抗凝固作用を発現する。その作用は、他の低分子量ヘパリンに比較し、抗第Xa因子活性/抗第IIa因子活性比が大きかった(in vitroでの抗第Xa因子活性/抗第IIa因子活性比が、ヘパリン1に対して4.88) 。
  2. 活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)に対する影響
    ヒト血漿におけるエノキサパリンナトリウムのaPTT延長作用は、ヘパリンに比較し弱かった (in vitro)。
深部静脈血栓モデルにおける抗血栓作用
エノキサパリンナトリウムは、ウサギ深部静脈血栓モデルにおいて単回皮下投与したとき、用量依存的に腹部大静脈閉塞時間を延長させ、抗血栓作用を示した。ヘパリンと比較して、エノキサパリンナトリウムの抗血栓作用は同程度であり、血漿中抗第Xa因子活性は高く、aPTTの延長作用は弱かった 。
血小板凝集への影響
エノキサパリンナトリウムはヒト血小板のアデノシン5'-二リン酸(ADP)誘発一次凝集能に対して、影響を及ぼさなかったが、ヘパリンは一次凝集能を亢進させた (in vitro)。

有効成分に関する理化学的知見

一般的名称
エノキサパリンナトリウム(Enoxaparin Sodium)
分子量
平均分子量約4500(3800~5000)
性状
本品は白色の粉末である。
水に溶けやすく、エタノール(99.5)にほとんど溶けない。
化学構造式
本質
ブタ腸粘膜に由来するヘパリンベンジルエステルのアルカリ分解により得られた低分子量ヘパリンのナトリウム塩;質量平均分子量は約4,500で、その範囲は3,800から5,000である;硫酸エステル化の度合いは2単糖当たり、約2である;その構成成分の大部分は糖鎖の非還元末端に2-O-スルホ-4-エノピラノースウロン酸構造を有し、還元末端に2-N, 6-O-ジスルホ-D-グルコサミン構造を有する。

包装

0.2mL×10シリンジ

主要文献

1
社内資料:日本人健康成人男子における単回皮下投与試験(2008年1月25日承認、CTD2.7.2.3)
2
社内資料:日本人健康成人男子における反復皮下投与試験(2008年1月25日承認、CTD2.7.2.3)
3
Laforest M D, et al.:Br J Haematol. 1991;77(2):201-8
4
社内資料:腎機能障害患者における薬物動態(2008年1月25日承認、CTD2.7.2.3)
5
社内資料:股関節全置換術患者における有効性及び安全性1(2008年1月25日承認、CTD2.7.6.2)
6
社内資料:下肢整形外科手術における比較的よくみられる有害事象(2008年1月25日承認、CTD2.7.4.2)
7
社内資料:膝関節全置換術患者における有効性及び安全性(2008年1月25日承認、CTD2.7.6.2)
8
社内資料:股関節全置換術患者における有効性及び安全性2(2008年1月25日承認、CTD2.7.6.2)
9
社内資料:股関節骨折術患者における安全性及び有効性(2008年1月25日承認、CTD2.7.6.2)
10
社内資料:腹部外科手術患者における有効性及び安全性
11
社内資料:腹部外科手術における比較的よくみられる有害事象
12
社内資料:抗凝固作用の作用機序(2008年1月25日承認、CTD2.6.2.2)
13
社内資料:各種血栓モデルにおける抗血栓作用(2008年1月25日承認、CTD2.6.2.2)
14
社内資料:血小板凝集能への影響(2008年1月25日承認、CTD2.6.2.3)

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(参考情報)

【参考】
●『肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン(第1版)』による各領域の静脈血栓塞栓症のリスクの階層化(抜粋)
総合的なリスクレベルは、予防の対象となる疾患や手術・処置や疾患のリスクに、付加的な危険因子を加味して決定される。例えば、強い付加的な危険因子を持つ場合にはリスクレベルを上げる必要があり、弱い付加的な危険因子の場合でも複数個重なればリスクレベルを上げることを考慮する。
リスクを高める付加的な危険因子:血栓性素因、静脈血栓塞栓症の既往、悪性疾患、癌化学療法、重症感染症、中心静脈カテーテル留置、長期臥床、下肢麻痺、下肢ギプス包帯固定、ホルモン療法、肥満、下肢静脈瘤など。(血栓性素因:先天性素因としてアンチトロンビン欠損症、プロテインC欠損症、プロテインS欠損症など、後天性素因としては抗リン脂質抗体症候群などを示す。)
大手術の厳密な定義はないが、すべての腹部手術あるいはその他の45分以上要する手術を大手術の基本とし、麻酔法、出血量、輸血量、手術時間などを参考として総合的に評価する。

先発薬

後発薬

                                                                                                                                                                                                       

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